ドラッカー最後の講義②
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──リーダーが意思決定する際に必要な勇気と自信を育むにはどうしたらいいのか、アドバイスしてください。
ここでカギを握るのは「顧客とは誰か」です。これが「成果とは何か」に続く第2の質問です。
企業経営の原点は顧客にあります。顧客を集めれば集めるほど、よりよい成果を出せる──こんな前提があるためです。
しかし病院は違います。「顧客とは誰か」により「成果とは何か」も変わります。「医師を顧客とする病院」と「患者を顧客とする病院」では、経営のやり方が違ってくるのです。複合的な目的を持つ大学などであれば、なおさらです。
第1と第2の質問をじっくり考え、成功した例として少女の地域活動を支援するNPO「ガールスカウト」があります。
数十年も昔の話ですが、ガールスカウトの経営が行き詰まっていた時期がありました。会員が年10~15%も減り続けていたのです。そんな経営を立て直した主役が、90年まで14年間にわたって最高経営責任者(CEO)を務めたフランシス・ヘッセルバインです。
私のアドバイスに従い、ヘッセルバインは「顧客とは誰か」について考え抜きました。ガールスカウトは少女のための組織です。でも、彼女は「少女は基本的にプロダクト(成果物)であり、顧客ではない。真の顧客は、地域コミュニティへの参加を求めている母親」と見抜いたのです。
その結果はどうだったか。ガールスカウトは10年で復活し、会員数はピーク時の2倍にまでふくらみました。
NPOの特徴は多様性です。病院は大学とは似ても似つきません。価値観はもちろん、使命も全然違います。病院であれば「健康と治療」、大学であれば「教育と研究」などと、意識的に使命を見極めなければなりません。
企業であれば、業態が異なっていても共通点が多いですね。自動車製造であっても、金融サービスであっても、結局は収益の最大化に向けて動いています。
同じ非営利だからといって、NPOを行政機関と混同してはいけません。行政機関はNPOと正反対の画一性を特徴としているなど、別物です。
英国の労働党は第2次世界大戦後、病院などの国有化を推進し、結果的に大失敗しました。いまだにショックから立ち直っていません。多様性を無視して「国有化したら行政機関のように運営すればいい」などと、勘違いしたためです。
組織が官僚的な体質になるまでにどのくらい時間がかかるのか、ご存知ですか。わずか20分です。成果よりもルールありき──こんな「お役所主義」がすぐに根づいてしまうのです。
「お役所主義」に染まった役人は何を考えて仕事をするでしょうか。「何が正しいか」ではなく「何項何節に何が書いてあるか」を基準に行動します。ルールを杓子定規に適用することばかりに夢中になり、成果を出そうとしなくなります。こうならないように警戒しなければなりません。
1人で長々としゃべり過ぎました。ここからはテーマはNPOに限らず、学生からの質問に答えたいと思います。
なによりも、意思決定のプロセスを理解することが大切です。まず「この決断は何のための決断なのか」と自問自答し、その次に「この決断によって何にコミットさせられるのか」と考えるのです。優先順位を見極めるわけです。
人間はせいぜい一つか二つのことしか同時にこなせないからです。三つのことをこなせる人なんて皆無です。
優先順位を付けると、経営上のリスクを背負い込みます。組織の構成員に対しては、意思決定の根拠について理解を求めなければなりません。真理は「自分には見えていても他人にはいっさい見えない」にあるので、どうコミュニケーションするのかがカギを握ります。いったん成果を出せたら、優先事項が変わっていないかどうか、再点検する必要があります。
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